最高で最低な日
前から行きたい場所があった。
少しだけ気になっていた場所だ。
そこは楽しくて思いのほか興奮して想像以上に時間を過ごせる場所だった。
楽しい時間を過ごして、心地よくなって、馴染みの土地でご飯も食べて、お酒も呑んで、二軒目にハシゴして。
そこでも彼女の悩みを聞いて、共感して、考えを披露して、腑に落ちてくれて。
そうした、良い時間を過ごしていたんだ。
でも、話の途中で、ある格言を言われて。
ある人にとって問題である事は、ある人にとっては問題ではない。
これってどう思う?
そんなことを聞かれて、その言葉を持つ意味を僕なりの解釈や考えを伝えて。
でも彼女の聞きたかったのは、自分の悩みについての文脈におけるその言葉の意味であって、その言葉自体の意味合いに対する話ではなくて。
その論点の違いが、最悪を導いた。
僕の考えの披露が、彼女を置き去りにして、ついには、いつか彼女を不快に思わせ涙させた事件を想起させて、今日も彼女を涙させた。
最悪だ。
その時僕は、全く話が噛み合わ無いことの苛立ちと、関係のない昔の思い出を繋げて思い出す彼女の行為に気持ちが冷めて、無言になった。
そして、お互い口数少なくして、別々の車輌に乗り帰路に着くのだ。
苛立ちと悲しみと不安を抱えて、同じ方向を走り、でも別々の車輌に乗って。
今ではこうして整理することで、自らの過ちに気づくことができた。
そんな、最高で最低な日なのだ、今日は。