過ぎ行く日々を少しでも。

日々の色々を記録していくトコロ。

転職の思考法

"私は、転職が日本の社会を変えると本心から信じている"

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

 

 印刷業界における大企業の営業マンとして働く青野君という架空の人物を主人公として、黒岩と呼ばれる経営コンサルタントから"転職の思考法"を学ぶストーリー仕立ての思考本。

主人公の置かれた立場や悩み、人物模様など、具体的に練り込まれていて一つの小説に近いものになっている。そして、彼が転職へと至るまでの疑問や悩みというのが、多くの人に共通しそうな、共通項の多いものになっていて、かつ具体的なのでぐいぐい読み進めてしまえる内容になっている。

この本を手にとっている時点で、少なくとも転職という考えが頭の片隅にあるだろうから、本人にある程度リーチするのは当然なのだろう。

この本がユニークなのは(といっても他の転職本を読んでいないので比較できていないけれども)、自身の転職先を選ぶ上での具体的な指標を挙げてくれていることと、それに留まらず、生きていく上での知恵、というものを少しアドバイスしている点だ。

例えば、こういう一節がある。

実際のところ、99%の人間が君と同じ、being型なんだ。そして、99%の人間は「心からやりたいこと」という幻想を探し求めて、彷徨う事が多い。なぜなら、世の中に溢れている成功哲学は、たった1%しかいないto do型の人間が書いたものだからな。彼らは言う。心からやりたいことを持てと。だが、両者は成功するための方法論が違う。だから参考にしても、彷徨うだけだ。

そして、心からやりたいことがないからといって悲観する必要は全くない、なぜなら「ある程度やりたいこと」や好きなことは必ず見つかるし、それで良い。その好きなことを、少しずつ育てていけ、と言い、こう続ける。

being型の人間にとって重要なことは、マーケットバリューを高めること。そのうえで「迷ったときに、自分を嫌いにならない選択肢を選ぶこと」だ。

あー、僕はbeing型ですー、と99%の人は読みながら思うのだろう。僕のように。

 

著者が目指している、信じているものというのは、よく分かる。

組織に依存して自分に嘘をつきながら過ごすよりも、自分という個が力を持ち、自分の好きなことで働くこと。そしてそうした人材が一般に求められる社会というのは、労働環境に置いて企業の理論が強力であることで人を不当に扱ういうような状況を無くし、個々人の力を健全に引き出し、風通しのよい文化を作っていく。働く人達が健全で元気であれば、社会もまた元気になるのだと、そういうように受け止めている。

そこには、当然ながら能力主義が前提にある。では個の力がない人どうすればいいのか。それは身につける他ないのだ。もはや終身雇用も年功序列も失われたと叫ばれて久しい。大企業でリストラのニュースも度々目にする。組織に守られていた時代はもう終わったのだ、というと何やら上から物を言っているようで居心地が悪い。しかし、「働く」ということが、意味にせよ形態にせよ、どんどん変わってきているのは事実だろう。(このあたりは義務教育に取り入れても良いんじゃないだろうか。)

そうした変化をなんとなく感じつつ、個の力を思った時に、何を隠そう、僕自身も個の力が無いと思っているので、危機感を感じている。じゃあ自分にとって何が必要なのかを考えた時に、「自分が本当にやりたいことが分からない」という落胆を感じていたのだが、being型の人にとってそもそも考え方が正しくない、ということをこの本で読めて、良かった。安心をしたわけではないけど。

とはいえ、僕にはまだやることが沢山あるんだよなー。

 

一つ蛇足的に補足しておきたいのは、「自分の好きなことをやって生きていこう!」という本は巷に溢れているけど(この本はその色はあまり出してないけど)、ただ同時に、"嫌だけど誰かがやらなければいけない仕事"というのも一方で存在するとは思う。この話の路線は社会論になっていきそうなのでやめておくけど。