羊の歌
"爆撃機が頭上にあったときに、私は孤独であった。爆撃機が去って後の数日ほど、私が孤独でなかったことはない。"
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著・加藤 周一
氏の半生を綴った、記憶を辿りながら書かれた本書。
途中途中に著名人、と言っても私自身はその人々を知らないのだけども、高名である方々が少なくないはずで、そうした人物と日常の中で一緒に過ごしたりすれ違ったりをしていることにも触れられる。
氏の視点から見ていた光景や、その内省はとても客観的で論理的な判断が常に下されてきたし、振り返ってみれば小さい頃からなんとなく感じてきたことの再認識と、そのことの吐露、あるいは客観的分析というのが語られている。
いずれの場面も当時の生活の様子や時代の雰囲気というものが紙面に漂っており、かつ氏の分析に富んだ視点というものを読むことができる。
本書で出てくる各著名人の代表作や人のなりというものを知っていると、当時の時代描写の距離感がぐっと近くなりそうな気がする。
もう一つ、印象的だったのは演舞のことだ。
空襲に備えて灯火管制が始まる状況の中、氏は新橋演舞場の切符を持っていたのでふらりと行ってみた。興行は中止と思いきや、観客まばらな会場で、三味線と古靭太夫の声が鳴り響く。
外にある軍国日本の観念の世界とは全く別の世界を、全く譲らず、鮮やかに堂々と、悲劇的に、その表現の世界があったのだと、氏は回顧する。
権力者達が始めた無謀な戦いを冷ややかに見つめ、しかし世間の空気は確実に軍国主義に染まって行く中で、氏はまたしてもそこで客観性を知覚したのだろう。
本書で書かれる文章は教養の高さが実現するものではあるけれど、少しでもそれを吸収したいものだなぁ。
しかし、本書と同じように小さい頃から解雇して自身の経緯を書けるかというと、書けないよねぇ。